2016年10月1日土曜日

腐儒の言語学(114) アルファベットで書き表す言語



Q.アルファベットで書き表す言語は英語を代表とするが、ドイツ語、イタリア語、フランス語など、アルファベットで書き表す言語は、英語がもとになっているのですか? 


A.すごい質問です。 

(ちょっとアタマがクラクラしてきたが、気を取りなおして) 



① アルファベットは古代フェニキアの文字が原型です。 

② 当時、文明の後進地域であったギリシアはそれを導入して文字を獲得しました。 

③ それは、イタリア半島エトルリアに伝わり、さらに新興勢力のローマに伝わりました。 

④ ローマ帝国の公用語は、ラテン語・ギリシア語の二種でした。ギリシア語はキリル式(現在はロシア語など)、ラテン語はローマ式のアルファベットです。 

⑤ 帝国時代、帝国外のフランク、ゲルマン、スラブなどの諸言語は文字を持っていませんでした。そして、言語の記録手段として、ラテン語・ギリシア語の文字アルファベットを借用しました。(厳密には、各地で、ルーン文字など独自のアルファベットが存在したが、ラテン文字に負けた) 

⑥ イタリア語・スペイン語などロマンス諸語はラテン語の後裔と言えますので、比較的うまく適合しました。 

⑦ ドイツ語などのゲルマン語は、ロマンス諸語と距離があるので、はっきり言ってローマ式アルファベット(ラテン文字)には、あまり向いていません。「sch,ch」の子音とか、ウムラウトの母音とか、運用方法の工夫と加工が必要です。 

⑧ ゲルマン語の一方言であった英語にも同様のことが言えます。八母音ぐらいあるのに、アルファベットには五母音しか用意してありません。しかも、文字獲得後、英語は音韻体系を大きく変え、しかも、フランス語・ラテン語などから大量の語彙を導入しましたので、「綴り」と「読み」が大きくくい違うことになりました。コトバと文字の関係では、英語は相当にヒドイ部類に属します(すぐには読めない)。それは、言語文化で後発であった、他民族の影響をうけつづけたこと、など苦難の歴史の投影です。 




 このような事例を見れば「コトバと文字は別物だ」とお分かりいただけますかね。 

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